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小林秀雄「中原中也の思い出」
投稿日2017.04.2
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小林秀雄「作家の顔」(新潮文庫)

より、「中原中也の思い出」

 

汚れつちまつた悲しみに……

 

汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる

 

汚れつちまつた悲しみは
たとへば狐の革裘かはごろも
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる

 

汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむなくねがふなく
汚れつちまつた悲しみは
倦怠けだいのうちに死を夢む

 

汚れつちまつた悲しみに
いたいたしくも怖気おぢけづき
汚れつちまつた悲しみに
なすところもなく日は暮れる……

 

      
        (中原中也「山羊の歌」より)

 

「悲しみ」が「汚れる」?

 

汚れつちまつた悲しみに

 

若いうちは、言葉遊びのようにしか感じられなかったこのフレーズ、歳を重ねた今では、ひとたび口にすると、ダム決壊のスイッチが入るように泣けてしまいます。
詩人が吐いた言葉を言い換えるのは気が引けますが
「汚れる」とは、つまり「こじらせた」とでもいうことでしょうか。
悲しみは、等しく誰にも降りかかるが、運命には時折いたずらがあり、抜け出す契機が、誰にも等しく与えられているとは限りません。
中也のたった30年の生涯は、喜びを取り戻すには時間が少なすぎたようで、その晩年は、あまりにも寂しい。

 

小林秀雄は中也の死から約二ヶ月後に、詩「死んだ中原」の中で

 

君に取り返しのつかぬ事をして了つたあの日から
僕は君を慰める一切の言葉をうつちやつた

 

としている。

 

ともに天才である小林秀雄と中原中也の関係については、一般人によっても、あまりに様々な考察がなされているが、私はこれ以上彼らを詮索したくないような気がしており、ここでは省きたい。

 

鎌倉比企ヶ谷妙法寺境内に、海棠の名木があったーー

 

 

 

 

 

 

こう書き出される「中原中也の思い出」は、それから尚12年が経ってからの随筆である。
ここには「取り返しのつかぬ事」などという、懺悔や後悔の文言は使われておらぬが、だからこそ尚とでも言うのか、終始そこはかとなく小林の慚愧の念で覆われている。

若さには「誤ち」があり、その先には「罰」も「後悔」も「更生」ある。

 

 

 

そして、まだその先だって。

どれもこれも、生きていればこそだ。

 

 

 

 

中也がその先に何があるのかも知らずに、抱えきれない汚れた悲しみに翻弄されたまま、旅立ってしまったことが、私はどうしてもつらくてならない。

 

 

2017年4月1日 鎌倉散策「本妙寺」にて

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