二子玉川駅より徒歩14分
世田谷区野毛にある
ウエムラアキコの朗読教室
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草ぼうぼう? 草ほうほう?
投稿日 2024年9月23日(月)
暑くてかなわん
と、草刈りをちょっとの間怠っていたら、家の敷地内を逞しい雑草が所狭しと生い茂ってしまいました。
これはもう手に負えない
と、いつもお世話になっている庭木の職人さんにお願いしようしたところ、かなり先まで予約がいっぱいとのことで大弱りしました。
どなたも考えることは一緒のようです。
近くを流れる多摩川の堤防や二子玉川公園の草、草、また草………。
刈っても刈ってもいたちごっこのようにあっという間に育ってしまいますが、行政が美観の保持と保全に取り組んでくれているお陰で、気がつくと いつの間にか一帯が綺麗になっています。
猛暑の中、額に汗しつつ口を一文字に結び作業している方をたまたま見かけることがあります。
本当に頭が下がる思いで、お礼の声をかけたくなるほどです。
実際はいじいじ黙って見つめているだけなのですが……。
うんと斜面になったところを乗用型の草刈り機に乗って、身体を傾け作業している姿を見て思わず
「カッコいい」
と惚れ惚れしたりして……。
さて
生い茂る草や髪の毛が伸びて乱れている様子を
「草ぼうぼう」
「髪をぼうぼうに伸ばしている」
などと言いますね。
この「ぼうぼう」は、漢字で書くとこうです。
1「茫茫」
2「苞苞」
3「芒芒」
文芸作品のルビの例が数多く網羅されている
「ふりがな文庫」
によりますと、
その他に
「莽々」
※「莽」は草の意。「莽々」現在では通常「もうもう」と読まれるが、意味は「ぼうぼう」とほぼ同じ
や、
「懵々」
の字を当てられている例も見られました。
※「懵」は「懜」の俗字
「懜」の意味は
1)心が暗い、心がぼんやりしている
2)乱れる、心が乱れる
3)無知なさま、愚かなさま
また同義で
「蓬蓬(ほうほう)」
とも表現します。
「蓬」の訓読み「よもぎ」は植物名ですが、もうひとつ「物が乱れているようす」という意味もあります。
「蓬髪(ほうはつ)」
「蓬頭(ほうとう)」
と書けば、手入れせずに乱れたままの頭髪、ということです。
いずれもヨモギが生え乱れる様子から例えられた言葉です。
◎「茫」
には
1)遠い、広い、果てしない、遥か
2)はっきりしない、ぼんやりした
という意味があります。
草や毛髪が「茫茫」と生える、という以外にも
1)「茫茫とした荒野」
2)「茫茫たる記憶」
などとも使います。
また、
「風や波の音の激しい様子」
という意味もあります。
《参考》
平家物語 巻第十 海道下(かいどうくだり)
「清見が関うちすぎて、富士のすそ野になりぬれば、北には青山峨ゞとして、松吹く風索ゞたり。南には蒼海漫ゞとして、岸うつ浪も茫茫たり」
(きよみがせきうちすぎて ふじのすそのになりぬれば きたにはせいざんががとして まつふくかぜさくさくたり みなみにはそうかいまんまんとして きしうつなみもぼうぼうたり)
【意訳】
〜〜清見関を経て、富士のすそ野に至れば、北は険しくそびえる青々とした山より松風が寂しげな音を立てている。南は青海がどこまでも広がり、岸辺に寄せ返す波が勢いよく鳴り響いている。〜〜
◎「苞」
の字には
包み、みやげもの、根元という意味のほかに
「アブラガヤ」
という多年草の意味もあり、こちらも植物ですね。
アブラガヤ
◎「芒」
の字は
1)稲など穀物の先端にある棘状の突起
ノギ、ノゲ(ノギの音変化)
2)切先(きっさき)、刃剣の刃先
3)すすき
4)光、光線の先端
5)広々としたさま
6)暗い、微か、愚か
7)疲れる、忙しい
の意味があります。
二十四節気「芒種」
は「芒」のある植物の種を蒔く頃のことです。
「芒」と同じ発音である、私が住む
世田谷区「野毛(のげ)」
の地名は「崖(がけ=切り立った所)」(当地は国分寺崖線にある)や「突端」、「のっけ(のっき=はじめ)」が由来だそうですので、「芒(のぎ・のげ)」と同義であろうと分かりました。
草ぼうぼう
の「ぼうぼう」を表記する漢字は何故こんなに多いのだろうか、という疑問から、つい本をひっくり返して遊んでいたら、なんと自分の住む町名の由来に帰り着きました。
「植物・穀物」に関連した字
苞
芒
莽
蓬(ほう)
「はっきりしない・ぼんやり」という意味合いの字
茫
懵
これらが、「ぼうぼう」に当てられた漢字だと知ることができ
楽しかったですが
でも、花より団子です。
なんだか蓬餅が食べたくなってしまいました。
【参考文献】
・角川新辞源
・コトバンク
・ふりがな文庫
【使用写真】
「Photo AC」